スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

シャチの素敵なストーリー(4)― ランの餌付け遊び

 私がシャチに惹かるきっかけとなったエピソードを連載していきます。 

 鴨川シーワールドの季刊誌、書籍、インターネット上のニュースや写真で情報収集したものを、筆者独自の観点からまとめたものです。引用される場合は、ご連絡下さい。


 カモメがプールサイドの壁の上で、シャチの群れ(ビンゴ・ステラ・ラン)をみつめている。
 カモメの視線の先をみると、プールサイドに何やら落ちている。

 シャチ達は悠然と泳いでいる。
 カモメは、隙を見て、プールサイドに降り立ち、物体への距離を縮める。
 ラン(2006.2.25生)がそれに気付き、プールを何周も泳ぎながら、虎視眈々とカモメとの距離を徐々に縮める。



(ラン 2010年12月撮影)

 カモメがプールサイドで、何かをついばんだ。

 ランが絶妙な距離でカモメに近づく。
ついに、顎をプールサイドにのせ、水を吐く。
 カモメが何かをついばむ。

 そういったやり取りが何度かあって、ついにカモメがランの歯の間にくちばしを突き立てた。
 
 私は、息を呑んだ。
 ランもシャチである。水上の食物連鎖の頂点のシャチの本能をむき出して、いつランがカモメを襲うのか、ハラハラした。

 ランは飼育下にいるから、決った時間に決った量のエサしか食べられない。
 カモメは、すぐそこの太平洋の上を自由に飛んで、餌を食べることができる。シャチのパフォーマンスや食餌時間にどさくさに紛れて、おこぼれにあずかることもできる。

 しかし、カモメは、決って昼過ぎにランのいるプールにやってくる。
 そして、ランと上のようなやりとりをする。

 実は、この行動、ランが、もらった餌を吐き出してカモメを餌付けして、暇つぶしに遊んでいるのだ。


☆☆☆参考文献☆☆☆
鴨川シーワールド『海の生きもの教室―シャチととに40年』
スポンサーサイト

シャチの素敵なストーリー(3)― ラビーの出産

 私がシャチに惹かるきっかけとなったエピソードを連載していきます。 
 鴨川シーワールドの季刊誌、書籍、インターネット上のニュースや写真で情報収集したものを、筆者独自の観点からまとめたものです。引用される場合は、ご連絡下さい。

 ラビーは、1998年1月11日に鴨川シーワールドでビンゴ・ステラの間に生まれた。
 飼育下で、日本で初めて産まれたシャチだ(*1)。

(ラビー   2010年12月撮影)

 シャチの素敵なストーリー(1)で書いたが、ステラは、野生の智恵と人間との信頼関係によって、無事に第1子を産み育てることに成功した。

 ラビーは、パフォーマンスショーに出演する母を見て育った。
 1歳になって、ラビー自身もショーに参加するようになった。

 3歳になって妹(ララ)が、5歳になって妹(サラ:2006.4.26に逝去)が産まれた。8歳になって、妹(ラン)が産まれた。ランの出産のときは、逆子出産に苦しむ母を介添えて、プール底に沈む新生児の頭を咥えて、はじめての呼吸を促した。
 
 9歳になって、命の恩人のオスカーと結ばれて、2008年10月13日に、初めて出産した。

(オスカー    2010年12月撮影)

 ラビーの初出産は、朝6時に始まり、水族館の開館時間にあたってしまった。
 水族館は、観客をプールから遠ざけながら、ラビーの出産を部分的に公開することにした。
 妹のララの介添えもあって、ラビーは、無事にオスのシャチを生んだ(公募でアースと命名される)。


(アース    2010年12月撮影)

 ラビーは母ステラが妹達を産み育てるのを見てきた。初めての出産とは思えないほど、落ち着いて子育てを開始した。
 アースが母乳を飲みやすいように体の向きをかえ、プールのコーナーでは速度を緩め、アースが離れないように気を配る。授乳中は、飼育員から餌を放り投げてもらい、泳ぎながら食べた。妹のララは、そんな母子を見守るように、プールサイドにアースがぶつからないようにガードして泳いだ。


(ララ(左) と ラビー (右)  2010年12月撮影)

 アースが1歳になる前に、飼育員は不思議な光景を目にした。
 ラビーが貰った餌を噛んでから、横にいるアースの口元に落とす。こうして、アースは、エサの味を知るようになる。


(アースのためにエサを要求するラビー   2010年12月撮影)

 シャチの何と聡明なことだろう。
 幼いころ捕獲され子育てをしらないステラ(ラビーの母)は、第1子(ラビー)出産のとき、子どもをどうやって扱ったらよいか戸惑った。それを救ったのは、同じ群で捕獲されたオスカーに助けてもらうという野生の勘や、ステラと信頼関係を築いたトレーナー達の協力だった。
 それから、ステラは3回の出産を経て、『母親』になっていった。
 母が妹達を産み育てるのを見て、娘のラビーやララは、子育てを学んでいった。

 シャチはユニークな生態を持つ海生哺乳類である。シャチは母親の率いる集団で暮らす。メスのシャチは、一生涯をその群(あるいは分化した群)で過ごし、母のみならず、おばや姉の女系親族のケアを受けながら育つ。こうして、メスたちは、群の中で、子育てを学び協力して実践していくのだ。
 この母性集団での育児という生態が、水族館にいる限られた、しかも子育てを知らないシャチ達によって、見事に復元されたのだ。

 ステラ達の子育ては、シャチが聡明であるということもさることながら、はじめから完璧な母親など存在せず、紆余曲折を経て母親は形づくられるという勇気を我々に与えてくれるような気がする。

(*1)1982年に出産例はあるが、捕獲時に妊娠していた胎児で、また新生児は生後5日目に死亡している。飼育下で繁殖・出産に成功したのは、1998年のラビーの誕生が国内第一例である。

☆☆☆参考文献☆☆☆
鴨川シーワールド「さかまた」 NO 26,45,60,61,63,72,74,75
井上こみち「シャチのラビーママになる」国土社  *なお、本書は素晴らしい内容であるが、写真の説明が若干正確さを欠くことは指摘しておきたい。いきなり、表紙が『オスカー』である。

シャチの素敵なストーリー(2)- 飼育員の迫真の演技

 私がシャチに惹かるきっかけとなったエピソードを連載していきます。 
 鴨川シーワールドの季刊誌、書籍、インターネット上のニュースや写真で情報収集したものを、筆者独自の観点からまとめたものです。引用される場合は、ご連絡下さい。 

 鴨川シーワールドは、昭和45年(1970年)10月1日に開業した。
 初代館長:鳥羽山照夫氏(故人)は、水族館のオープンにふさわしい生き物を紹介したいと考えていた。
 シャチの飼育は1964年にシアトル水族館、サンディエゴ(フロリダ)のシーワールド、カナダバンクーバー水族館で始まったばかりで、生態、飼料、飼育方法についての資料もわずかだった。
 しかし、館長はシャチという素晴らしい動物を日本に紹介したいと考えていた。海外からのシャチの輸入はなかなか上手くいかず、たまたま東京湾にシャチの群が迷い込んだと知ると、ヘリコプターをチャーターして捕まえようと試みたこともあった。

 昭和45年(1970年)9月4日、待望のシャチ(オスのジャンボ、メスのチャッピー)がアメリカからやってきた。
 2頭は4ヶ月もしないうちに、11種類のパフォーマンスを覚え、大人や子供を驚かせ感動を与えた。
 しかし、飼育開始後3年半でジャンボが、その3ヶ月後にチャッピーが死亡した。当時、アメリカの水族館でも最長飼育記録は3年だった。
 2頭の死を無駄にしないためにも、館長は、つぎのシャチの入手に逡巡した。

 2頭の死から7年後の昭和55年(1980年)2月11日、アイスランドから2頭のシャチ、オスのキングとメスのカレンを輸入した。
 館長は、入社4年目の獣医にシャチの生態を研究し飼育にあたるように指示した。
 問題は、エサである。アイスランドのセイディラサフニドでは、キングとカレンは生のニシンを与えられていた。しかし、水族館のエサは、手に入りやすく価格が安定していることが必要条件だ。千葉で、生のニシンを確保し続けることは難しい。
 冷凍サバを与えた。アイスランドから30時間を越える空輸で、キングとカレンは空腹なはずなのに、冷凍サバには見向きもしない。サバはプールの底に沈んでいった。
 しかたなく、生きた魚を仕入れてプールに入れた。2頭の目の色がかわり、美味しそうに食べた。

 ある日、獣医は、プールサイドで暴れる魚を必死で腕にかかえる飼育員を見た。キングとカレンの目つきが違う。魚が飼育員の腕からプールに落ちると、シャチは魚に突進し、あらそって美味しそう食べた。

 獣医が「生きた魚が手に入ったんですね」と声をかけると、飼育員は「生の魚なんてねーよ」と答えた。
 飼育員は、冷凍の魚があたかも生きた魚であるように、腕の中で巧妙に死んだ魚を動かすという迫真の演技をしたのだ。
 それから、キングとカレンは食わず嫌いを克服して、冷凍サバが好きになった。



(手前からステラ、ラン、ビンゴ   2010年12月撮影)

(アースのためにエサを要求するラビー   2010年12月撮影)

☆☆☆参考文献☆☆☆

出典:鴨川シーワールド「さかまた」 NO26、45、60、61、63、74、75
鴨川シーワールド 海の生き物教室「シャチとともに40年」
勝俣悦子「わたしはイルカのお医者さん」岩波書店
井上こみち「シャチのラビーママになる」国土社

シャチの素敵なストーリー(1)― ステラの出産

 私がシャチに惹かれる契機となったエピソードを連載していきます。 
 鴨川シーワールドの季刊誌、書籍、インターネット上のニュースや写真で情報収集したものを、筆者独自の観点からまとめたものです。引用される場合は、ご連絡下さい。


(サブプールからメインプールを見つめるステラ。 近くを泳いでいるのは四女ラン   2010年12月撮影)

 ステラの出産が近い。それまでのマギーの2回の出産例で、出産の前日になると妊婦シャチの体温が下がることがわかっている。
 マギーの先例では、残念なことに、子シャチは生存することができなかった。子シャチが生き延びるには、3つの関門がある。自分で呼吸すること、親が子を守って泳ぐ親子関係ができること、子シャチが母乳を飲むこと。
 マギーの1回目の出産例では、第2の関門を突破することができなかった(1995年3月3日)。2回目は死産で、その後、母シャチ(マギー)は膵臓の急性疾患で命を落とした(1997年10月7日)。
 マギーと子供たちの命を無駄にしたくない、飼育下での妊娠・出産を奏功したいとずっとスタッフ一同がんばってきた。
 決めていることがある。効率を犠牲にしても、人間の手作業・観察にこだわる、動物の視点にたって考える、決して妥協しないということだ。
 
 これまで、シャチの出産例は成功していないので、同じ海棲哺乳類のイルカの出産例を参考にすることにした。イルカの場合は、プール内にオスがいると、妊婦シャチやそれをサポートする雌シャチが落ち着きを欠くことがあった。
 そこで、3頭いるシャチのうち、ステラ以外の2頭、父になるビンゴと、雄のオスカー(ステラと一緒の群から捕獲されシーワールドへやってきたオス)をサブプールに移して、ステラがメインプールで安心して出産できるようにしようとした。
 ところが、ステラとオスカーは互いに離れようとしない。
 仕方なく、オスカーをメインプールに残した。

(ジャンプを披露するオスカー   2010年12月撮影)

 1998年1月11日、明け方に出産が始まり、午前8時に子シャチが生まれた。
 ところが、母のステラは、プール底へ沈む我が子を気にするでもなく、泳いでいる。マギー出産時の悪夢が頭をよぎる。
 その時、オスカーが咄嗟に子シャチの頭の後ろを咥えた。その刺激で、子シャチは尾びれを振って水面に顔を出し、初めての呼吸が成功した。


 だけど、第二の関門が待っている。
 子シャチは母シャチとのつながりをもって、母乳を飲まなければ、生きていくことはできない。
 ステラは相変わらず我が子には無関心でオスカーと悠然と泳いでいる。
 そこで、サブプールとの水門を開けて新米パパのビンゴをメインプールに入れることにした。ビンゴが子供を威嚇するのではないかという声もあったが、ステラの母性を信じることにした。
 水門が開くと、ビンゴは勢いよくメインプールに入ってきた。ところが、ビンゴはプールを一周するとあっさりとサブプールに戻ってしまった。
 仕方が無い。ビンゴもステラもオスカーも子どもの頃に捕獲されてシーワールドにやってきた。生まれたばかりの子シャチを見たことはおろか、扱い方を知らないとしても不自然ではない。
 相変わらずオスカーと泳いでいるステラをみて、館長(故鳥羽山照夫氏)はステラの担当トレーナーを呼んで指示を出した。
 女性トレーナーは、子シャチの方にステラを誘導しようとした。しかし、反応がない。
 そこで、館長の指示を遂行することにした。
 それは、子シャチを奪い取ってステラの母性本能を刺激するというのであった。
 やっとの思いで、子シャチに追いつき、その胸びれに手をかけた瞬間、彼女の背中に衝撃が走り、奈落に突き落とされた。
 必死の思いで、水面に這い上がる。
 そこには、子シャチに寄り添って泳ぐステラの姿があった。



 それから、さらに1日以上たった出産54時間後、ステラの初授乳が確認された。
 ステラが授乳など子シャチの扱いになれてきた頃、彼女はおそるおそるプールに入った。ステラは彼女を攻撃することもなく、いつも通りに彼女を迎えた。信頼関係が壊れることはなかったのだ。

 一同、ステラの野生の智恵(オスカーを出産の介添役に残す)と自分たちが守ってきたルール(人間ができる努力は惜しまない)が結実したことを確信した。

 ステラは、その後、3頭を出産した。
 第4子の出産は、逆子で難産だった(2006年2月25日)。それを母ステラの傍で見つめていたのは、あの時にオスカーに頭を噛まれ、トレーナーに連れ去られそうになった子シャチ(長女ラビー)だ。


(逆子で産まれた四女ララにキスする母ステラと、それを見守る父ビンゴ   Photo: 2010年12月撮影)

 ラビーは、逆子に苦しむ母ステラを追尾し、産み落とされた新生児がプール底に沈むと、すかさず頭をかんだ。子シャチは尾びれをふって、泳ぎ始めた。
 出産後、プールには、子シャチとともに同心円になって泳ぐ母、姉妹の姿があった。次女ララと母ステラがが新生児(ラン)を挟む。長女ラビーはプールの壁から新生児を守るように泳いだ。


(ララ(左)とラビー(右)   2010年12月撮影)

 その後のラビーの出産(2008年)については、こちらの連載で改めて紹介したい。


(ラビーが2008年に出産したアース: 日本発の飼育下第3世!   2010年12月撮影)



☆☆☆参考文献☆☆☆

出典:
鴨川シーワールド「さかまた」NO26、45、60,61、63、75
鳥羽山照夫編著「新 水族館へ行きたくなる本」リバティ書房
井上こみち「シャチのラビーママになる」国土社
TBSニュース6 2006年2月25日放送(Youtubeに動画あり)
プロフィール

しろぶた

Author:しろぶた
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。