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ビンゴ・ステラ問題―連載(4) - 実効性あるブリーディングローン(2)

 シャチは妊娠期間が17ヶ月、哺乳期間が18ヶ月程度と長い上に、死産率が(さらに母体を巻き込む割合も)高いので、次の一手は迅速かつ慎重に考える必要がある。

 前回は、2011年2月現在、国内のシャチだけで、近親交配問題を解決する3つの可能性を示した。
 今回から、海外にも目を向けて考えてみたい。

 2011年2月現在、全世界には41頭のシャチがいるが、鴨川の7頭を除いた内訳は、下表のとおりである。
 実は、筆者は、海外のシャチについて、確信できる情報源を持っていない。
 以下は、様々な書籍やインターネット上の水族館のサイトや個人のホームページで得られた情報を、筆者なりの観点で精査し、まとめたものである。

                 オス     メス
シーワールドカリフォルニア    2(1)   4(2)
シーワールドフロリダ        2(1)   4(1)
シーワールドテキサス       3(0)   3(0)
7フラッグカリフォルニア       0(0)   1(0)
マイアミ水族館           0(0)   1(1)
スペイン                3(0)   3(0)
フランス                2(0)   2(1)
カナダ                 1(0)   1(1)
アルゼンチン             1(1)   0(0)
オランダ               0(0)   1(1)
                  14(3)  20(7)
 *()内は野生由来の頭数 

 実は、アメリカの水族館も、近親交配問題を抱えているようだ。
 アメリカのシーワールドは、シャチ飼育の歴史も長い上に野生由来の個体数が多いため、血統は多いのだが、Tillikumという繁殖力の恐ろしく強いオスがいる。第2世代以降のシャチのうち、性成熟の可能性があるオス(2002年末までに出生したもの)、メス(2004年末までに出生したもの)が合計14頭いる(Tillikumを除く)。この内訳であるが、私の分析によれば、
Tillikumの血が入っていないメス――Orkid, Kayla,Takara, Kaliaの4頭
Tillikumの血が25%入っているメス――1頭いるが、性成熟していない(2006年生)。
Tillikumの血が50%入っているメス――Unna, Kohana,Skylaの3頭
Tillikumの血が入っていないオス――Keet, Ketoの1頭
Tillikumの血が25%入っているオス――2頭いるが、性成熟していない(2005年、2010年生)。
Tillikumの血が50%入っているオス――Kyuquot,Tuar,Tekoa,Nakai,Ikaikaの5頭
である。
 鴨川の置かれている状況-
 ビンゴの血を50%受けているメス3頭(ラビー、ララ、ラン)、オスカー(すでにビンゴの子ラビーと繁殖しているので、ララ・ランと繁殖しても血統は増えない)、アース(ビンゴの血を25%受けている)を抱えており、近親交配が危ぶまれる―
と、さほど変わりがないのである。

 ここで、Tillikumの血が全く入っていないシャチの近況である(前述の通り、複数のソースを綜合した情報である)。
 Tillikumの血が全く入っていないメスの近況は次のとおりである。
・Orkid(1988.9.23生)は、いまだに出産例がない(Tillikum以外のオスとの人工授精に失敗したという情報もある)。Orkidは、米国の他のシャチとは別の血統を持っている(彼女には兄弟姉妹がいない)ので、血統管理という観点からは、最も繁殖してほしいメスであろう。しかし、出産例がないのである。
・Kayla(1988.11.26生)も、Orkid同様、別血統である。Kaylaは、2005年にKeetの子を産んだが、子育て方法がわからず、子どもは人工飼育の末に2歳半で2008年に死亡している。Kaylaは2006年11月以降、おそろしい繁殖力をもつTillikumのいるSWFにいる。しかし、妊娠したという報道はない(Tillikum以外のオスは幼年である)。もしかしたら、Tillikumと彼女を隔離しているのかもしれない。
・Takaraは既にTillikumの子を2頭生んでおり、現在はSakari(2010.1.7生)の育児中である。現在くらしているSWTには、3頭のオスがいる。うち2頭は、Tillikumの子である。もう1頭のKeetは、異母弟である。いずれにせよ、彼女の繁殖相手は限られる。
・Kaliaは、SWCにいるが、同居しているオス2頭のうち、Ulisesは1977年生まれと推定されるが繁殖実績がなく、もう1頭のNakaiは、Kaliaの異父兄弟(しかもTillikumの子)である。

 Tillikumの血が全く入っていないオスの近況は次のとおりである。
・Ketoは、異母姉であるTakaraの子Kohana(これもTillikumの血を50%受けている)に、2010年10月13日にAdanというオスを生ませたばかりである。
・Keetは、前述のとおり、Kaylaに2005年に子どもうませたが、うまく育たなかった。現在、SWTで、同居している性成熟しているメス2頭のうち、Takaraは異母姉であり2010年に子どもを産んだばかりであるし、Unnaは自分の祖母(Katina)とTillikumの子である。SWCのKaliaは実の子だから近親交配に抵触する。

 ご存知の方も多いかと思うが、アメリカは、生物多様性条約には調印していない。一方で、1972年の世界環境会議でIWCよりも前に、クジラ捕獲禁止を訴えた国である。
 今や、野生のシャチを取り込むことは、我が国以上に難しいだろう。
 アメリカがなぜ生物多様性条約に加盟しないのか、ここでは深く言及しない。
 ただ、世界に41頭しかいないシャチの飼育に関して、米国と日本が協力するのは、可能ではないか。アメリカの重視する遺伝子産業への影響は、ほとんどない。なぜなら、シャチの繁殖研究は、水族館以外に利益をもたらさないから。 米国シーワールドは鴨川シーワールドとも近い関係であると聞く。両者の共同研究もある。(*1)

 次回は、米国シーワールドと提携して、近親交配問題を解決する方法を提示したい。

(*1)Robeck, T. R., Steinman, K. J., Ramirez, K., Greenwell, M., Van Bonn, W., Yoshioka, M., Katsumata, E., Dalton, L., Osborn, S. and O'Brien J. K. (2009). Seasonality, estrous cycle characterization, estrus synchronization, semen cryopreservation and artificial insemination in the Pacific white-sided dolphin (Lagenorhynchus obliquidens). Reproduction 138:391-405.

Robeck, T. R., Steinman, K. J., Yoshioka, M., Jensen, E., O'Brien, J. K., Katsumata, E., Gili C., McBain J. F., Sweeney, J. and Monfort, S. L. (2005). Estrous cycle characterization and artificial insemination using frozen-thawed spermatozoa in the bottlenose dolphin (Tursiops truncatus). Reproduction 129:659-674.

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